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ヤツらに後ろを取られるな!~その2~

前回の続き。



翌日以降も、何も判明せず。

相変わらず無表情の羊や山羊相手に、
喜ばれているのか、迷惑がられているのか
よく分からないまま世話をしていた。


それからしばらくして、色んな生徒の
「羊に頭突きを喰らった」という噂が
あちこちで聞かれるようになった。

どうやらみんな後ろから攻撃されているらしい。

やっぱりあいつか。
しかもみんな後ろからって!どういう了見かねぇ。(笑)


その頃から、飼育当番の際の空気がかわっていく。

みんな「羊に後ろを取られるな!」
という緊張感が出てきていた。


「牧歌的」なんてイメージは、
牧場関係者の心の中にはないんだ。きっと。

「知らない牧場の近くをたまたま通りかかった休暇中のだれかさん」
の心の中にあるんだろう。たぶん。

そんなことを思わずにはいられない
この当時の記憶…。



噂が広まってからは、すっかり
警戒態勢を取るようになった私たち。

互いに目を配り、後ろからの頭突きに備えるようにした。


ある日の放課後、
その日の当番は間もなく終了する頃。

私たち女子数名が、
小屋の前で掃除しながら雑談をしており、
Kちゃんという女の子が、一人離れて掃除をしていた。

なんとなーくKちゃんの方を見ると、
Kちゃんはあの時の私と同じ場所にいた。

そして羊が3mくらい離れた場所で
Kちゃんの方を向いている。

Kちゃんは羊に背を向けている。
あの時の私のように。

羊が数歩、後ろへ下がったあたりで
みんなKちゃんと羊の位置関係に気付き始めた。
嫌な予感で「ん?」とか「え?」とか言っている。(笑)

そして羊がKちゃん目がけて走り出した途端
みんな一斉に叫んだ。
「わーーっ!」とか「あーーっ!」とか。(笑)

(こういう時、言葉って出てこないのね)

こちらを見て異変に気付き、
振り返って羊を確認、
咄嗟に軽く箒を構えるKちゃん。

減速して方向転換する羊。
離れていっちゃった…。

Kちゃん、お見事。
事なきを得てよかったよかった。

だけど実は、みんなでわーわー叫んでた瞬間、
私は「あっ」くらいの声しか出ませんでした。

びっくりしたから、とか
こわかったから、とか
そういうのとはちょっと違って。

あの衝撃を受けた日以来、羊は一体どういう風に
私に頭突きを喰らわしたのか
気になって仕方なかったのです。

見れば少しは羊の心情が分かるかと思って。

なので、羊が走り出した瞬間、
つい…見入ってしまいました。(笑)

(みんなの声が圧倒的に速かった、
というのもあるけど、
それは理由じゃないって分かってるのよ。笑)

ごめん、Kちゃん。
何も知らないと思うけど。
知らせようもないけど。(笑)

ひどいな、私。(笑)

Kちゃんに他意はないのです。
断じて。誓って。(笑)


しかし羊があんなにも張り切っていたとは…。
明らかに狙いを定めていた。

そしてそれ以上にびっくりしたのがKちゃんの反応。
なんであんなにやる気満々だったのか、
小柄な体でまさか羊と戦う気だったの?と
ふと疑問に思ったけど、そういえば彼女は剣道部員。

長い棒を持ってると条件反射で構えちゃうのか…。



それ以降、羊の頭突きの噂は聞こえてこなくなる。
みんな対処法を身につけたからか。

そのまま3年になっても何も起こらず卒業。
(何かあったのに知らなかっただけかもしれないけど)

結局、それ以上羊のことを知る機会もなく
時々ふと思い出しては、当時を懐かしんでいると、
後にテレビのハプニング映像特集的な番組で
衝撃のシーンを見ることになるのです。(笑)

それも一度目にしたらその後も何度も。(笑)

釣りをしている(だったかな?)男性が、
背後から羊に頭突きをされ、ポーンと飛ばされて
川だったか池だったかに落下する様子を。

(ケガなどがなかったようなのでまだ良かったけど)

あの映像を初めて見たとき
「こういう状況だったのか!」と
食い入るように観てしまった。

「あ、どうやら羊は私に対して
不満や敵意があったんじゃないかしら…」
という悲しい結論をチラつかせながら。(笑)

さすがにあれよりは優しかったけど。



またまた長いのでここらで切ります。
次回で完結です。更に長いけどごめんなさい。(笑)
ではまた明日にでも。






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